134  名前:氷河期@ ID:HLHNONE  2013/03/02 00:35

すまん、ミスがあった。リアスポイラーじゃなくてリアディフューザーだった

第10話 『目覚め』

「むぅ…ぼっちゃま、良い走りですぞ」
じいやが思わず手を叩くほど村田はよく走れていた
「だけどじいや、ここ湾岸線だぞ? ほとんどストレートなのに良い走りも何も…」
「いやいやぼっちゃま、良い走りですぞ」
じいやは拍手を続けた
何がしたいのか村田には理解が出来なかった
メーターは200km/hを切っていた。村田の額に冷や汗が浮かんでいる
ギリリ、と村田が小さく歯ぎしりをした
その時だった。昼間にも関わらずバックミラーが黒く包まれた
「ぼっちゃま、ご覧下さいブラックブルですぞ」
「ブラック…ブル…」
村田は緊張していた。歯を思い切り食いしばっても落ち着きそうにはない

ブラックブルの姿は少し変わっていた。以前のような純正に近い状態ではなく、エアロが搭載されていた
リアディフューザー、カナード、そしてウィングはGTウィングへと変貌を遂げていた
荒れ狂う猛牛に相応しい姿である
すさまじい爆音とともにZの右側をブラックブルが抜けていった
(俺は…こんな化物も追わなければならないのか…!)
村田の目がやや垂れ下がった
「ぼっちゃま、ブラックブルはブルーバードと同等のセンスを持つマシン。あれに勝つということはブルーバードに勝つステップを踏むことにもなるのですぞ」
じいやの口元は少しニヤついていた
何か策がありそうな顔をしている
「ブルー…バードと」
じいやの一言を聞いて村田は目覚めた
(そうだ、俺は勝たなければならない。あのクソ親父を守るため、一家の名誉を守るためにも、俺は走らなければならない…!!)
村田の目つきが鋭くなった
ギアを5速に上げ、思い切りアクセルを踏み込む
220、230、240… 凄い速さで加速が伸びていく
「じいや、すげぇエンジンだ。伸び方が半端じゃねぇぜ」
「お褒めに預かり、光栄でございますぞ」
じいやが何年もかけて組んだエンジンは伊達じゃなかった

「小田さん、結構速いですよあのZ」
「あぁ…おう、加速の伸びが良いなありゃ」
―小田 毅、チューニングショップ「ODA SPEED」の店長。源田の弟子で車に関する知識が豊富。45歳の天然パーマ
「はは、並びますよZと」
Zはブラックブルの横にまで来ていた
Zは前へ、前へと押し出されるように走っている。まるで村田の心情を体現するかのように
「おぉ、ありゃすげぇや、エンジンがこりゃすげぇぞ」
小田も米沢も笑っていた
「もうちょいで大井Uターンっすね、この車のダウンフォースがいかに強くなったか、味わってみようと思いますよ」
「だが米沢、先導しないとついてこねぇぞ。あのZのドライバーは多分まだ青い若造だ」
小田は察しが良いようだ
米沢はより強くアクセルを踏み込んだ、猛牛は少しずつ速さを増していく
「やっぱ路面との貼り付き方が段違いですね、路面のザラつきが直に伝わってきますよ」
ブラックブルはZの前へと出た

大井Uターン、湾岸線から横羽線へと通ずる大きいカーブ
此処での事故は後を絶えない


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