216  名前:氷河期@ ID:HLHNONE  2013/04/02 00:08
第20話 『found』

(しかし、いざ首都高に出ると怖いもんだな。俺…いや、GT-Rを狙ってる奴がいるってだけで随分と雰囲気が違う)
米沢は今日も首都高を走っていた
赤いR32に狙われることは承知している、走りに対する意志が恐怖に打ち勝ったのだろう
(小田さんは完全にビビっちゃってたなぁ…同乗したくねぇって。あんだけ言ってたのに何なんだあの人は)
心の中で愚痴をこぼす。あれだけ言っておいて同乗しないとは小田もかなり薄情である
狭い新環状線を200kmを超える速度で駆け抜けていく
幸いにも今日は車通りが少ないようだ。米沢の視界には1台の軽自動車が見えるだけだった
(静かだ…いつもなら走り屋気取りの野郎が何人かいるはずだが…)
この静けさに米沢は少しながら恐怖を覚えていた
一台の車がここまで影響を与えるのか、その影響力に恐怖を覚えていた
(そういや何故赤いRは捕まらねぇんだ…何回も派手に事故を起こせば警察も黙ってはいないだろう)
全くもってその通りである
捕まえるどころか、警察は赤いRのナンバーすらも掴めていないようだった
猛スピードで駆け抜ける赤いRを追うのは警察でも厳しいだろう
(オールクリア…ここまでスカスカだとつまらねぇな…)
オールクリア…本当にブラックブル以外の車が見えなくなってしまった
米沢の視界には何もない、バックミラーにも何も映らない
…と思っていた
バックミラーが一つの光を捉えた
(眩しい…何だ? 速いのが…来る)

猛スピードで走る一台の車はブラックブルの隣に並んだ
米沢の目はある色を捉えた
赤色だった
(―!? コイツが!?)
そう、赤いR32だった
だがいつものようには仕掛けてこない、速さを競うような姿勢を見せていた
(何だ…いつものようにクラッシュはさせねぇってか。上等だぜ!!)
―ブォォォォン
マフラーからいつもの低い音が轟く
ブラックブルはとうに250km/hを超えていたが、それでも赤いRは横を走っていた
(離れねぇ…何だコイツ、バケモンか!?)
離れる様子はない、むしろ余裕を見せているようにも見えた
2台は少し大きめの右コーナーに差し掛かろうとしていた
(この右コーナーを抜けたら湾岸線…不利なコースだがやるしかねぇッ)
米沢が軽く減速しつつブラックブルを右の壁へと寄せる
その走り方は、誰かの走りを連想させた

―お前のテクニック、借りるぜ!


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