243  名前:氷河期@ ID:AOHOLGND  2013/04/19 23:14
第24話 『忘れ去られし王者』

(すげぇ…ここまで心地よくC1を走れたのは初めてだ…)
600馬力、全装カーボンボディとなったブラックブルの走りは一味違った
コーナーが多く、比較的減速が多めになってしまうC1でもかなりの速さを保ち続けていた
(600馬力に高いパワーにカーボンという軽さ、最高のマッチだ…!)
S字コーナー、低速コーナーなどが連なるC1
カーボンという軽さのおかげで減速しても凄い勢いで立ち上がる
そして、600馬力というハイパワー
まさしく猛牛に相応しい姿だった
(追える…追えるぞ! あの赤いR32を!)

(あぁ、やっぱ微糖だわ)
走り疲れたのか米沢はPAでコーヒーを啜っていた
缶を空にし、ゴミを捨てようとしに行くとある姿が目に入った
「コイツ…!?」
米沢は思わず声を漏らしてしまった
米沢の目に写っていたのは赤
そう、赤いR32だったのだ
「米沢君じゃないか、久しぶりだね」
米沢の背後から透き通った声が聞こえる
その声に反応して振り向いた米沢は目を大きく見開いた
そして何かを思い出した
「あんたは…!」
「ハハッ、覚えていてくれたんだねー」
そこには人が良さそうな茶髪の男が立っていた
このR32を操っているとは到底思えないような風貌であった
「林…何であんたが此処に…」
「名字もきちんと覚えていてくれたなんて嬉しいねー」
その男は林 雄大(はやし ゆうだい)
米沢より2歳年上の27歳である
「最近GT-Rを狩り始めたのはあんただったのか!?」
その米沢の一言には怒りがこもっていた
「そうさ。5年前、君に敗北した雪辱を今、晴らしに来たのさ」
「何故…何故だッ!? 何故関係無い一般人や走り屋を巻き込んだ!?」
「孤高の存在でなければならない…唯一のGT-Rであるとともに、頂点でなければならない! 君に分かるか? 僕の苦痛が! 王座を奪われる苦痛が!」
5年前、首都高の頂点は林だった
今乗っている赤いR32を華麗に乗りこなし、瞬く間に最速の座を奪い取った
だが瞬く間にその最速の座は奪われてしまった
米沢、ブラックブルの手によって―
「そんなくだらねぇ理由で…」
先ほどの怒りはどこへ行ったのか、米沢は少し呆れていた
「くだらない!? 勝者の君にとってはくだらないのかもしれない! だが僕には違う、あんな純正に近いR34に負けるなんて恥だ! だから僕はこのR32を強くした!」
この5年間、林はR32のチューンを行っていたようだった
その結果、速さと恐怖を出してしまった
「たしかに速くなったな…あんたのRは。だがあんたは使い方を分かっていない、再び王座に舞い戻るために他の存在を消すのか? その速さで!」
「くっ…うるせぇ! 黙れ黙れ黙れ黙れェ!」
林の拳が米沢に飛んでいく
―パシッ
米沢の手に林の拳が勢いよく直撃した
「悔しいなら、決着つけようぜ。今度は…速さでな!」
R32とブラックブルのマフラー音が静かなPAに響き渡る
(目ェ覚ましてやるよ林、あんたは俺よりも速く走れるはずだ!)

―R狩りは今夜で終わりだ!


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Destination Blackout


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