259  名前:氷河期@ ID:AOHOLGND  2013/04/24 23:36
第26話 『最速のライン』

(何とかC1に持ち込んだが…此処からは再び高速コーナーが連なる…)
横羽線ではなく何とかC1に持ち込んだものの、しばらくは高速コーナーが続く
此処をどう凌ぐかが勝利への鍵となる
(落ち着け…最速のラインをなぞるんだ、どんな高速コーナーでもラインの違いで差は出てくるはずだ…)
呑気にしている暇もなく、またR32が接近してきた
(C1に持ち込まれてしまったけれど、この高速コーナーでは僕が有利だ! 前を走らせてもらうよ!)
R32がますますペースを上げて接近してくる
タイトなストレートにも関わらず、遂に二台が並んでしまった
(並んだ…マズい、どうする!? そういや、このストレートの先はS字…だが緩やかなS字だ! 前に出るのは難しい!)
焦る米沢に天が何かを囁いた
―S字ってのは直線だ、直線に近いラインを見つけろ
小田の声だった
正確には米沢の記憶の中の小田の声であるが
(そうだ、S字は直線だ! さすが知識だけはあるぜ小田さん!)
気付けばR32はすでに前を走っていた
そしてS字コーナーへと進入していく
(ココだッ!)
ブラックブルがやや車体を斜めにしてS字コーナーへと突っ込んでいく
減速は…無しだ
(馬鹿な!? ノンブレーキでこのコーナーに進入するだと!?)
林は驚きを隠せなかった
自分は道に沿って正しく走っているのに対し、相手は訳の分からない場所を走っている
そして、二台がちょうど重なろうとしていた
(このままじゃぶつかる…がまぁ良いか。散々他人の車に当ててきた野郎だ、少しくらいかすっても文句はねぇだろ)
ガリッと音を立ててブラックブルが前に出た
やや強引なラインではあったが、相手が相手なので仕方ないだろう
(クソが…何考えてやがる!)
林が眉を潜めた
明らかに怒りがこめられている顔つきであった

連なる低速コーナーにより、林と米沢の距離はかなり離されていた
C1を抜け、新環状線に入る頃にはミラーにR32の姿は無かった
(此処から新環状に入る…ちゃんと着いて来いよ、林!)
ブラックブルは新環状線へと入っていく―
R32の姿は無い
タイトなコーナーをいくつか抜けた
R32の姿は無い
コーナーをいくつか抜け、超高速ステージ湾岸線へと突入する
R32は…
(来やがった、やっと)
―ブォォォォン
少し高めのマフラー音が響く、R32だ
(見つけた…ブラックブル…今夜君は此処で…死ぬ!)
林の息が荒い
完全に情緒不安定な状態であった
(何でわざわざ俺が不利な湾岸線を選んだのか分かるか? あんたと競いたいからだよ、速さでな)
その米沢の思いが林に通じたのかは分からない
だが、R32は凄い速さで追い詰めてきた
ドライバーと車が一心同体となっている、そのような気もした
再びR32とブラックブルが並んだ
だが此処は湾岸線、ストレートでは圧倒的にR32が有利だ
(そりゃ抜かれるわな… だが勝負は此処からだぜ?)

―ハンデ? 違うな、もともと実力に差なんてねぇんだよ


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