291  名前:氷河期@ ID:AOHOLGND  2013/04/30 23:50
第27話 『力』

C1であれだけ差を開いたR32と遂に合流した
舞台は超高速ステージ、湾岸線
速さと速さで競い合える究極のステージだ
合流して間もない間に、R32はブラックブルの前へと飛び出した
(さすがだ…だが俺も抜かれて黙ってるような奴じゃねぇ、ここからは本気だ)
米沢はクーリング走行をやめ、一気にブラックブルを加速させた
ブラックブルがR32に食いついていく
馬力の差はかなりあるはずだが、見る見るうちに追い付いていく
(林、ここで勝負を決めるのは車同士の力じゃないんだぜ? ドライバーの志が、最後の決め手となるんだ!!)
ブラックブルは米沢と完全にシナジーしていた
その姿は美しく、はたまた凶暴にも見えた
(ありえない、何故だ!? 馬力の差はかなりあるというのに!)
林は米沢の強さに気付いていなかった
車を凶器のように扱う人間には、一生理解出来ないだろう
(残念だ林… それほどの車を持ちながらも、それを凶器に変えるなんてな! 思い知らせてやるよ、真の力を!)
ブラックブルからバックファイヤーが吹き出す
マフラーから大きな音が響いた
そしてブラックブルがR32の前へと出た
これが…本当の力である
(ありえない…この、僕が…)
抜かしては抜き返されを繰り返しているうちに林はますます情緒不安定になっていた
「ハハハッ、僕よりも速く走るつもりか? 残念だ、君が僕より前を走っても王座にはつけないッ!!」
自分以外誰もいない車内で一人高笑いを上げた
完全に狂ってしまった
「何故か分かるか? 米沢ァ…」
林は何か企んでいるようであった
その不気味な企みを米沢は瞬時に察した
(何か嫌な予感がする… このままでは終わらない、そんな感じがして気味が悪い)
米沢は以前のバトルを思い出して少し恐怖していた
いつクラッシュさせられるか分からない、その時の感覚が再び戻ってきていた
「もう少し走れば大井Uターン、そこが君の墓場だ…米沢ァ!!」
林は米沢を殺す気らしい
明らかに殺気走った目をしている
(分かったぞ…この感覚、アイツ俺を殺す気だ。だが俺は降りないぞ)
「首都高ランナーの、プライドにかけてな」
その一言と同時に二台が一気に加速する
二台とも限界を突破しているように見えた
いつブローするか分からない、だが両者ともそれを気にすることは無かった
クリアーな湾岸線を二台が駆け抜けていく…

いよいよ林がブラックブルを撃墜する予定の地、大井Uターンへと差し掛かる
米沢は何も知らずに大井Uターンへと突入していく
いつものようにブレーキを踏み、軽くアクセルオフして曲がるのが基本である
が、一名常識が無い者がいた
ノンブレーキで突っ込んでくるR32、林だ
(!? いかれてんのか!? ここで、こんな所で俺を殺す気かッ!?)
米沢は驚いた、そして恐怖した
死がすぐそこまで迫っている、この状況で恐怖しない人間はいない
「ハハハッ、君も僕も此処で終わりだッ!! 死ね、ブラックブル!!」
狂気に満ちた林が300km/hを超えるスピードで突っ込んでくる
このスピードで衝突したら両者ともただでは済まないだろう
(どうする…俺の推測だと衝突まであと5秒、出口付近ではあるが5秒では無理だ!! 何とか5秒以内にコーナーを脱出出来れば!!)
その時、米沢はハンドルについている小さなボタンに気付いた
(忘れてた…そうだ、これがあったんだ!!)

―王座に就くか、王座を壊すか


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