329  名前:氷河期@ ID:AOHOLGND  2013/05/21 22:31
第32話 『対面』

(よーしッ、あのランエボⅩ目指して俺も走るぞーッ)
福田はやけに張り切っていた
やはり岸本のブルーバードに感化されていたのだ
(まずは湾岸線、踏んでくぞーッ)
福田はいつもより踏めていた
これもブルーバードの影響だろう
だが未チューンの車は速度が伸びない、6速200km/hが限界だった
(もう速く走ることは怖くないはずなんだ、なのにダメだ、やっぱり速度が伸びない!)
福田はより高い限界を求めていた
こんなんじゃ勝てない、もっと速くないと
限界の低さが福田を悩ませていた
(おーし、今日は湾岸でバンバン飛ばしてくかぁ)
偶然にも岸本も湾岸を走ろうとしていた
そして、これまた偶然にも岸本の目に福田のエボⅨが写り込んできた
(あーれ、あのエボⅨ、どっかで見たことが… 思い出した、あの珍走団みたいな連中の最後尾走ってた野郎だ)
岸本はしっかりと覚えていた
福田と短い間だが少し走ったことを
そして福田も後ろから迫るブルーバードの存在に気付いた
(出た!! 青色のランエボⅩ!!)
気付けばブルーバードは福田の前に出ていた
だが追い越されたと同時に福田のモチベーションが急上昇した
(へぇ、付いて来る気か。おもしれぇ、ちょっと引っ張ってやるか)
ブルーバードが減速していく
速度は210km/h、福田のエボⅨの限界より少し上で走っている
(あれ、意外と差が開かないもんだな。もしかして手抜いてんのか?)
福田は意外と敏感だった―

(そういやエボⅨの奴ってどんな奴なんだ? ちょっと気になるし、PAまで引っ張ってみるか)
そうして岸本は最寄りの市川PAへと入っていく
(あれ、PA入んのか? まぁ良いや、俺も行こうっと)
岸本に続いて福田もPAへと入っていく
ブルーバードの横に福田が停める
青色が二つ、綺麗に並んだ…
「よう、あんたがコイツを運転してたのかい?」
岸本はエボⅨを指差しながらそう言った
「あ、はい、そうです。あなたもこのランエボⅩを?」
「あぁ、そこらの走り屋の間じゃブルーバードって呼ばれてる。まぁ俺もコイツのことをブルーバードって呼んでるんだけど」
ブルーバードという言葉に福田が少し反応した
(あぁ、アイツらが言ってたブルーバードって、このランエボⅩのことだったのか!)
「それにしてもこのエボⅨは良い、だがちょっとばかし限界が低すぎるんだ」
「鋭いですね、俺もそう思ってるんですけど、どうしたら良いか分かんなくて…」
福田の苦笑いに対し、岸本はニヤリと裏のある笑みを浮かべていた
「じゃあちょっと俺に付いて来いよ」
「え、何処に行く気ですか?」
「お前の真価を発揮させられる場所だ」

―覚醒せし二人目、君臨は近い


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