343  名前:氷河期@ ID:AOHOLGND  2013/05/28 23:55
第34話 『ファーストラン』

ランサーエボリューションⅨが、生まれ変わった
フロントに取り付けられたカナード、GTウイング、その他オプション、そして500馬力エンジン
完璧と言っても良い仕上がりだろう
「出来たぞ、福田」
源田の声は自信に満ち溢れていた
「あ…ありがとうございます!!」
福田は感銘を受けている
だがお礼を言うにはまだ早いような気もした
「良かったじゃないか福田、これでサークルの連中と同等…いや違うな、サークルの奴らとは段違いのレベルまで来てたな」
「そうですね、俺が…いや、ランエボが強くなったことをアイツらに見せつけてやります!!」
車の変化が人をも変えた
チューナーとしては喜ばしい光景に違いない
「よっしゃ、そうと決まれば走るぞ福田!!」
「はい!!」
岸本がランエボの助手席へと乗り込んだ
ブルーバードに乗らなかったのは、おそらく福田の運転を近くで見ていたいからだろう
福田もランエボⅨへと乗り込む
乗った瞬間に、力強い何かを福田は感じた
「す、すごい…乗っただけで力強い何かを感じる。間違いなく進化している、俺のランエボは」
力強い何かは進化の証明だった
そして、飛び立つ―

「良いねぇ、このスピード。助手席に乗ってるだけなのに凄い心地良いよ」
「たしかに凄い速くなりました。ですが何でしょう、いざ踏んでみるとすげぇ怖くなるんですよ」
エボⅨの進化は同時に福田へ恐怖を与えていた
今までとは段違いの加速、限界、慣れていない今はそれがとても怖いだろう
「恐怖なんて踏んできゃ勝手に消えるんだ。今はとにかく踏め、アクセルから足を離すな」
「分かりました。やってみます、俺
速度は200km/h、純正の状態だとこれが限界であった
だが今は違う。3速8千回転程度で此処まで持ってこれる
限界は、高い
「お、バックミラー見てみろよ。良い対戦相手が来たぜ―」
「あ、あのR34は…」
街のネオンに照らされし黒きボディ
力強く、それでいて軽快な走りは最速の名にふさわしい―
「出やがったなぁ…大輔」
「首都高最速、ブラックブル。俺らのサークルでも有名ですよ、首都高最速のヤベェ奴だって」
「ま、俺みたいな新参よりかはアイツの方が名は通ってるだろうな。とりあえず踏んでこうぜ、福田」
「もちろんです」
―ブァァァァァン
5速6千回転、時速は260km/
「どうだ米沢、新しいセッティングは」
「そうっすね、何か前より軽くなったっすよ源田さん」
「なら良いだろう。とりあえずあのエボⅨの様子見だ。遠慮せずガンガン踏んでけェ―」

―恐怖と進化は表裏一体。だが恐怖は弱い


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