348  名前:氷河期@ ID:AOHOLGND  2013/06/07 00:03
第35話 『スリル』

4速、エボⅨの限界が一つ上がる
「すごい、4速から感覚がまるで違う…俺のランエボであって、俺のランエボでないみたいだ…」
「社長のチューニングはすげぇだろ、はっはっは」
虎の威を借る狐とはまさしくこれであろう
だが源田のチューンが施されているブラックブルも遅れを取ることはない
「うおおお、すげぇスリルだ。今まで経験したこともない、だけどそれが心地良い!」
5速、更にエボⅨの限界が上がる
「良いぞ福田、その感覚だ。いつ死んでもおかしくない世界を、楽しめ!」
福田が更にアクセルを踏み込んでいく
まるでアクセルに足が吸い付けられているようだ
「はははっ、良いぜェアイツの踏みっぷり。お前も負けてらんねぇな、米沢」
「源田さん、俺を誰だと思ってるんすか? まだあの車に慣れてない奴に遅れを取るなんてありえないっすよ」
米沢の余裕は本物だった
まだギアを一つ残している。つまり福田より一回り限界が上ということである

新環状から横羽へ―
道幅がタイトになっていく
「おいおい、大丈夫かよ。まだこのマシンに慣れたってわけでもないのに横羽になんか入っちゃって」
「やってみなけりゃ、分かんないですよ」
まだ慣れていないマシンで横羽に入るのは自滅と同じだ
「おいおい、横羽に入るとはな。米沢、此処がチャンスだ、現実をぶつけてやれ」
「もちろんっすよ」
ギアを5速へと上げる
福田のエボⅨへの距離を更に詰めていく
「近づいてきた…マズい、ギアはこれ以上ない」
「気にすんな、とにかく踏んでけ」
二台は高速コーナーを抜け、長い直線へと入っていく
直線で圧倒的に有利なのは…ブラックブルだ。
「この直線をどう凌ぐかだぜ、福田。一つだけ言えるのは…自分を信じろ」
「俺自身を信じる…」
エボⅨのマフラーからバックファイヤーが吹き出す
それとほぼ同時に、ブラックブルがエボⅨの左に並ぶ
「この直線を抜けてすぐ、右に向けてキツい低速コーナーが来る。加えて勾配も結構キツい。これを綺麗に抜けたら、お前はブラックブルより上だ」
福田が歯を食いしばった

―挑戦者に立ちはだかる壁。どう超えるか


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