374  名前:氷河期@ ID:AOHOLGND  2013/06/22 00:05
第37話 『下克上』

福田は走った
ただひたすら走った
努力することで自分自身に自信、強さを与えていった
「岸本さん、俺、走れますよ。こうやってしっかりと!」
一週間。
二人にとってそれは長くも短くも感じられた
ただ、一週間走り抜いたという事実は揺るがない
「お前は努力の天才だわ、マジで。此処では天性の才能こそが全てだと思ってた、でもそれは違った。それをお前が証明した」
元々のセンスの問題ではない。努力こそが人を変える、そして向上させる
少し歪んだ首都高の世界を、少しの間だが元に戻していた
「俺、必ず岸本さんを超えますから! それじゃまた!」
「おう、待ってるぜ」
二匹目の怪鳥はGNDホイール本社を後にする
そう、彼にはもう一つの目的があった

「おーっす福田ちゃーん、今日も走ろうなー。エアロとかウイングつけちゃったみたいだけど、結局ただの飾りだよなー?」
馴れ馴れしく肩を組んでくる
今の福田にとって、さぞかしそれは不快だったろう
「あ? だっせぇステッカーベタベタ貼ってるような野郎が偉そうに言ってんじゃねぇよ」
反駁。
今の福田は何かが違う
「んだとコラ、もう一回言ってみろやオイ。貧乏人のウスノロ野郎がいきがってんじゃねぇぞ!」
「ウスノロ? ふん、それは今の俺の走りを見てから言えよな。んじゃ」
彼はその場を後にした
さり気ない宣戦布告をして

いつものパーキングエリア、いつもより数は少ないもののサークルの連中は相変わらず屯していた
「おーおー来たか福田コラオイ、俺の走りを見てから言えだァ? 笑わせんなクソが」
「じゃあ見せてやるよ。俺についてこい」
数台のエキゾースト音
それは過激なバトルを連想させていた
(最初はゆっくり引っ張って、その後一気に突き放す!)
舞台は湾岸線。速さだけを競うならもってこいのステージだ
(思い知らせてやるよ…テメェらの走りがどんだけ下らねぇかをな!)

―戦え、弱者。


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