375  名前:氷河期@ ID:AOHOLGND  2013/06/28 23:44
第38話 『その程度』

福田のエボⅨは先頭を走っていなかった
これは“敢えて”なのだろう
適度に油断させたところでブチ抜く、福田はそう考えていたはずだ
(ケッ、何が俺の走りを見ろだ。全然おっせぇじゃねぇか雑魚が)
案の定サークルのメンバー達は油断していた
俺達がこんな雑魚に抜かれるわけがない、そう考えていたはずだ
(こんなノロノロ蛇行してたのかコイツら…マジで迷惑だったんだなぁ)
福田は鼻で笑う
たしかにサークルのメンバーの運転は雑だ
ちょっとした高速コーナーへの進入の仕方、一般車の避け方
何もかもが汚かった。リアが揺れ過ぎていたのだ
(かーっ、見てらんねぇな。ブチ抜いてやる)
福田がギアへと手をやった。速く走ることの意思表示だ
そしてアクセルを踏む
ギアは4速、回転数5000、水温は少々高いが問題無、時速は…200km/hオーバー
青い閃光がサークルのメンバーの下品なRX-8を照らす
(何だ…!?)
動揺のあまりハンドルを思い切り右へ切ってしまったようだ
RX-8は思い切りスピンし、後続の4台を止まらせてしまう
「嘘だろ!? クソッタレが!!」
RX-8のドライバーは急いで携帯を取り出し、電話をかけ始めた
「おい! 福田の野郎が俺らをブチ抜いて行きやがった! ぶっ潰せ!」

福田のエボⅨは止まらず、横浜方面へと走り続ける
(やっぱ大したことねぇな)
浮島料金所を抜けると、何か悪寒を感じた
―来たぜ…エボⅨ
サークルのメンバー達だった
(妙に少ないと思ったらこっちで待機してやがったか…案外一枚岩じゃないんだな)
下品なスープラを筆頭に、5、6台がエボⅨの後へとついてくる
彼らは追い抜く態勢ではない
潰す態勢に入っている
「よぉ…どう潰す?」
「構わねぇ、殺す勢いで行け。あの野郎、雑魚のくせにイキがりやがって


―貧相な殺意に挫けず


戻る