38  ◆06eq/BhDjA 2013/04/05(金) 17:05:19
ピピピピピ―――――

「う~ん…」

いつものように目覚まし時計が決まった時間に鳴る
俺はまだ眠気が抜けきらない半覚醒状態の体を無理に動かして、それを止める

これからまたいつもと同じ日常が始まる
いつもと同じように学校へ行き、勉学に励み、友人と会話を交わし……
例を挙げていけばきりがない

「隼人ー!起きなさーい!」

下の階からお袋が俺を呼んでいる
ちなみに隼人というのは俺の名前だ
フルネームは水窪 隼人である
39  ◆06eq/BhDjA 2013/04/05(金) 17:05:52
俺は瞼を擦りながら、2階へと続く階段をゆっくりと降りる
俺の家はいたって普通な洋風建築の一軒家(3階建て)だ

「おはよう・・・」

欠伸混じりに朝の挨拶をする

「おはよう、もう朝ご飯できてるわよ」

そう言うのは俺のお袋水窪 鈴葉だ

「はーい」

トーストの香ばしい匂いに誘われ、俺は眠気を吹き飛ばし、食卓につく
40  ◆06eq/BhDjA 2013/04/05(金) 17:14:30
トーストを齧り、コーヒーを啜る
それを繰り返す
その後皿をさげ、洗面台の鏡に向かい、身だしなみを整える
そして学校指定の制服に着替え、鞄を持ち、靴を履く

「それじゃあ行ってきます」

そうお袋に言い、玄関の扉を開け、駅へと向かう


今日の天気は晴れとテレビで言っていたが、今は太陽を雲が覆いつくしている
特に知り合いと会うこともなく、駅へ到着した
通勤中や通学中の人で駅は賑わっている
切符を買おうと思ったが券売機前は結構な人数並んでいる
仕方なく俺は普段はあまり使わないICカードを使った
何故あまり使わないかというと、俺は切符のほうが好きだからだ
理由なんてない、なんとなくだ


ホームへ着くのと同時に、目的の電車が到着した
俺は急いでその電車に乗るが、座席の確保はできなかった
既に先客に座られている

『ダァシェリエース』

電車が発車する
俺は吊り革に掴まり、目的地への到着を待つ
ふと窓の外を見ると、空は見事なまでの快晴だった
41  ◆06eq/BhDjA 2013/04/05(金) 17:15:18
『シブヤタウン駅~シブヤタウン駅~』

俺の目的地であるシブヤタウン駅に到着した
俺はその駅で降り、改札機にICカードを通す

駅を出て暫くすると、俺が通う学校が見えてくる
シブヤ第二高等学校
それが俺の通っている学校だ
部活動に力を注いでいる学校で、大体の生徒は推薦で進学している
たまに普通に試験を受けている生徒も居るが

いつものように校門前に立っている体育教師に挨拶し、教室へ向かう
しかし教室までの道のりが辛い
この学校には西校舎、東校舎、北校舎と分かれている
西校舎は4階建てで、部室が集中しているため、生徒からは『部室棟』と呼ばれている
東校舎は科学室や家庭科室、職員室などが集中している
移動教室のとき以外はあまり生徒は立ち寄らない校舎だ
西校舎と同じく4階建てだ
そして北校舎
ここは各学年の教室が集中している校舎
3階建てで、上から1年、2年、3年と振り分けられている
俺は1年生なので、最上階の3階まで階段を上らなくてはならない
はっきり言って面倒だ
42  ◆06eq/BhDjA 2013/04/05(金) 17:16:37
階段を上り1-3の教室を目指す
1年の教室は4組まであり、そのうち3組が俺の教室だ

時刻は8時10分、教室には既に何人かの女子が集まっていた
このクラスで早く来るのは男子は俺のような家が学校から遠いやつくらいで、ほかは余裕を持って20分くらいに登校する
俺は教室へ入ると、窓際最後列に位置する自分の机に鞄を置き、その中から教材を取り出し、机の中に乱雑に放り込む
その後椅子にすわり、予鈴のチャイムが鳴るまで家から持ってきたLマガを熟読する
これが俺の日課だ
ちなみにこのような私物の持込は、R-18ものや銃火器、それと菓子以外なら認められている
45  ◆06eq/BhDjA 2013/04/05(金) 17:18:16
そろそろ大体の男子が到着する時間帯だ
今俺はサイバーランス社長のインタビューページに目を通している
特にめぼしい内容ではないが、暇つぶしには調度いい
次のページをめくろうとした時

「うぃーっす隼人、今日も早いなぁ」

ある男子が声をかけてきた

「おう、お前は今日も遅いな」

俺は適当に返事をする

俺に声をかけてきた男子、こいつの名前は速水 龍之介
茶色がかったウルフヘアが特徴の二枚目だ
染めているのではなく地毛らしい
入学式当日に2年生から告白された猛者だ
ちなみに断ったらしい
そういえば俺の特徴を書き忘れていた
俺の特徴といえるところは、漆黒のワイルドショートくらいしかない
体系は少し平均より痩せているという感じだ

「お前またLマガ読んでんの?」

「サラッと目を通してるだけだよ」

「同じの何回も読んでて飽きないか?」

「…流石に飽きる」

Lマガは週刊誌なので毎週違うのを読むのだが、読み終わったら次の発売日まで読むものがない
なので次の発売日まで今週号を読み直しているというわけだ
46  ◆06eq/BhDjA 2013/04/05(金) 17:18:33
今日はいつもと同様、HRの後午前の授業を受け、昼食をとったのち、午後の授業に励んむ
別に勉強を苦と思うことはないが、つまらないとは思う
将来役立つことならまだしも、何故役に立たないことまで学ばなければならないのかと考えたりする

キーンコーンカーンコーン…

本日最後の授業の終了を告げるチャイムが鳴った
学級委員の号令と共に、教師に礼をする
俺はそそくさと帰る準備をする

HRを終えた後、俺は部室棟へと向かうため、今居る校舎を2階まで降りる
この学校の校舎は全て2階に連絡通路が通っており、態々1階まで降りる手間が省ける
俺は連絡通路を通り、部室棟3階を目指す
何故向かっているかというと、俺の所属している部活の部室がそこにあるからだ
何の部活に属しているかは後でわかる
47  ◆06eq/BhDjA 2013/04/05(金) 17:18:53
そうこうしている間に部室の前に到着した
扉には長方形に切った紙に『LBX部』と横書きされて、セロハンテープで貼られている

『LBX』とは『Little Battler eXperience』の略で、TO研究員の山野淳一郎氏によって作られたホビー用小型ロボットである
しかしホビーといわれて甘く見てはいけない
このLBX、なんと銃より殺傷能力が高いのだ
現にLBXを悪用した犯罪者がこれまでにも何人かポリスメンに捕まっている
だが正しい使い方をしていれば、間違っても人が死ぬことなんてない
これ以上は長くなりそうだから省略しよう

俺は部室の扉を開け、中に入る
部室は元々技術室だったところを再利用している
長机が3台、パイプ椅子が9脚設置されており、本などはマガジンラックに収納されている
あと、部屋の奥にリサイクルショップで買った3人掛けソファが2つ並んでいる

部室にはまだ誰も来ていないようだ
俺はパイプ椅子に腰掛け、鞄から自分のCCMを取り出す
CCMとはLBXを操作するためのコントローラーみたいなものだ
これがまた優れもので、携帯電話としての機能も備わっている
48  ◆06eq/BhDjA 2013/04/05(金) 17:21:09
俺はCCMをネットに接続し、『@ちゃんねる』を表示する
『@ちゃんねる』とは
『「ハッキング」から「今晩のおかず」までを手広くカバーする巨大掲示板群』のことである
まだ皆が来ていないとき、俺はニュースを見て時間を潰している
世界情勢から面白ニュース、勿論LBXのことも
通常のページで@ちゃんを閲覧するとスレタイがごちゃごちゃして見づらいのだが
俺はCCM用に作られた専用ブラウザアプリをインストールしているため、スッキリ整理されて表示されている
まずは国際情勢板を開き、ざっと目を通す
特別暗いニュースはないが、明るいニュースもない
国際情勢板を閉じ、別の板に移ろうとしたとき、興味深いスレタイが目に留まった

「『大阪でLBXが暴走』?」

俺はそのスレを開ける


大阪でLBXが暴走

1 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[] 投稿日:2050/10/17(月) 15:51:04.94 ID:hskOl3np
通天閣も崩壊した
マジでヤバイかもしれん

2 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2050/10/17(月) 15:52:19.62 ID:7wzje3X2
2get

3 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[] 投稿日:2050/10/17(月) 15:52:22.97 ID:xFu2qAxZ
マジならソースはよ

4 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[] 投稿日:2050/10/17(月) 15:54:39.10 ID:ubEkleZK
俺大阪住んでるけど何も起こってないぞ


その後何百ものレスがあったが、>>1のレスはその1回しかなかった
49  ◆06eq/BhDjA 2013/04/05(金) 17:24:28
「………」

俺は@ちゃんを閉じた
そしてワンセグを起動する
チャンネルを回すが、LBXが暴走したなんていうニュースはない

「なんだ、ガセか」

そう呟き、ワンセグを終了した
それと同時に部室の扉が開き、1人の女性が入ってきた

「すまない、遅くなってしまった…」

「まだ俺しか来てませんよ」

彼女は3年生でLBX部部長の篠崎 葵先輩
黒髪ロングストレートが似合う綺麗な女性だ
裏LBX大会で3年連続優勝しているらしい

「さて、皆が来るまでLBXのメンテナンスでもしておくか」

そう言って先輩はパイプ椅子に座り、鞄からメンテナンスキットとジョーカーを取り出した
ジョーカーは先輩の愛機で、クセが強く扱いにくい機体だ
市販のジョーカーは白を基調としているが、先輩のは黒く塗装されている
50  ◆06eq/BhDjA 2013/04/05(金) 17:26:09
先輩はジョーカーのアーマーフレームを取り外し、コアスケルトンの状態にする

「あー、やっぱり腕の螺子が緩んでいたか」

メンテナンスキットからドライバーを取り出し、螺子をきつく締める
次にグリスを全間接に注ぎこむ
そしてアーマーフレームを取り付け、テストプレイを行う

「うん、これで機動性は問題ないな」

CCMを閉じ、もう一度アーマーフレームを取り外す
次はコアパーツの調整を行うようだ
しかし室内がグリスの臭いで満たされてきたので、俺は外に出ていることにした
ノブに手をかけようとしたとき、勢いよく扉が開け放たれる

「皆!大変だ!」

速水だった
走ってきたのか息を切らしている
ちなみに速水もLBX部の部員である

「どうしたんだよ速水、何が大変なんだ?」

俺が速水に尋ねる

「学校がLBXに占拠された!」

「…嘘はよくないぞ、速水後輩」

「嘘じゃありませんよ!既に職員室と放送室が制圧されてます!」

「それじゃあ、此処に攻め込んでくる可能性もあるのか?」

「今男子帰宅部が連絡通路と入り口に防衛ラインを張っているが、其処を突破されればあるいは……」

ズドンッ!!!

部室棟が揺れる
下から煙が立ち込める
51  ◆06eq/BhDjA 2013/04/05(金) 17:26:28
「くそっ、連絡通路側がやられたようだ…」

速水が呟く

「とりあえず速水後輩、敵の侵入を防ぐためにも、扉を閉めてくれないか?あと寒い」

「あっ…、すみません」


扉を閉めたあと、俺達は速水から簡単に事の経緯を説明された

「それで、帰宅部は全滅したのか?」

「入り口はまだ頑張っているが、突破されるのも時間の問題だろうな…」

ギリリと速水は右親指の爪を噛む

「他のやつらは今何処に?」

先輩が速水に尋ねる

「……多分全員やられました」

「何だと!?」

「全員連絡通路側を護っていたので……」
52  ◆06eq/BhDjA 2013/04/05(金) 17:47:09
そこで暫く沈黙が続く

「………気のせいかもしれないんだけど」

この沈黙を破るために、さっきから気になっていたことを口にする

「天井から音しないか?」

また沈黙が包み込む
いや、皆耳を澄ませて音を拾っているのかもしれない

「あ、音するなぁ」

速水が呟いた
やはり気のせいではなかったようだ

「でも、だんだん大きくなってるような……」

その速水の言葉を聞いて、先輩が叫ぶ

「伏せろ!」

突然天井から無数の弾丸が降り注ぐ
弾は机や椅子を貫通し、床にまで到達する
穴だらけになった天井は抜け落ち、更に大きな穴ができる
その穴からLBXが6機落ちてくた
落ちてきたLBXはウォーリアー、ムシャ、アマゾネス、ブルド、バーサーカー、ジャンヌDだ

「やはり来たか…」

先輩はCCMの電源を入れ、ジョーカーを起動し、Dエッグを投げる

「Dエッグ展開!」
53  ◆06eq/BhDjA 2013/04/05(金) 17:48:20
Dエッグとは―――

最新式のLBXのバトルフィールドで、その名の通り卵型をしている
分離すると中央部に強化ダンボールが配置され、展開と同時にエネルギーフィールドらしきものにプレイヤーごと包まれる
ライトニングランスをはじめとするアタックファンクションは下手をすればプレイヤーだけでなく
周辺すら被害を被ることが多く
また、プレイヤーのやり逃げ防止を前提に完全決着させるため生み出された


―――Dエッグ内

「水窪後輩はともかく、速水後輩はLBXを持っているか?」

先輩が速水に尋ねる

「十分なメンテナンスはできてませんが、一応持ってます」

そう言って速水はズボンの尻ポケットからLBXトゥルーパーを取り出した
トゥルーパーは接近戦仕様であり、耐久力に優れるプロメテウス社製のLBXだ

「よし、それではバトルを開始するぞ。準備はできているな?」

そう言われて俺はCCMの電源を入れ、ブレザーの内ポケットからLBXフライトデクーを取り出す
フライトデクーは神谷重工製のLBXデクーにフライトユニットを増設したLBXだ
カラーリングは白に変更されている

「ではいくぞ!ジョーカー!」

「トゥルーパー起動!」

「いけ!フライトデクー!」


戦闘データ

ジオラマ:王宮城内

敵LBX

ウォーリアー
武器1:バルキリーレイピア&ライトバックラー
武器2:ハンターライフル

ムシャ
武器1:薙刀・斬鉄
武器2:なし

アマゾネス
武器1:バトルランス
武器2:オートマチックガン&バックラー

ブルド
武器1:ブルドアックス
武器2:4連ランチャー

バーサーカー
武器1:バーンナックル
武器2:ALBXバズーカ

ジャンヌD
武器1:グラディウス&グラディウス
武器2:アサルトAR4C&アサルトAR4C


味方LBX

ジョーカー
武器1:呪魂ソウルイーター
武器2:レッドリボルバー

トゥルーパー
武器1:メガトンパニッシャー
武器2:なし

フライトデクー
武器1:雷神棍
武器2:マキシガトリング
54  ◆06eq/BhDjA 2013/04/05(金) 17:48:47
王宮城内に降り立つ9つの機影
敵はメインカメラを深紅に染め上げ、暴走マシンと化した哀れな6機
だがこの面子ならば勝つことは容易いだろう

バトルスタート!

CCMから合成音声が再生される
その音声が鳴った刹那、一つの爆発音がした
見ると、ブルドの頭部がなくなっていた
先程の爆発は恐らく頭部によるものだろう
そして予想通り数秒後に、残された部位も盛大な花火を打ち上げた
このような芸当ができるのはやはり

「これが極限までスピードを追い求めた結果だ」

先輩しかいないだろう
今起こったことをわかりやすく説明しよう
まず先輩はバトル開始の音声を合図に、高速でコマンドを入力した
それをジョーカーに搭載された高性能CPU『メタナスGX』が処理をし、行動に移す
先輩の言う通り、このジョーカーは極限までスピードを高めており、その速さは正に韋駄天の如し
目にも留まらぬ速さでブルドまで近づき、そして斬首した後、元々の位置まで戻った
端から見れば相手が自爆したように見えるだろう
何故なら、ジョーカーはそこにあるように見えているからだ
それ即ち残像
並みのプレイヤーが行える技ではない
これが『迅雷の天馬』の異名を欲しいままにしている先輩の実力だ
55  ◆06eq/BhDjA 2013/04/05(金) 17:49:09
一見すればチート級の強さを誇る先輩のジョーカーだが、一つ致命的な弱点がある
防御力の欠如だ
LBXはニク抜きやパテ盛りで重さを調節する
ニク抜きを行うとスピードが上がり防御力が下がる
パテ盛りはその逆だ
先輩はニク抜きを限界まで行ったため、実際ジョーカーの中身はスカスカである
更に重くなるからとの理由でコアパーツは最低限のものしか積んでいない
なのでディフェンダーやライフガーターは装備していない
更にジョーカーはストライダーFのため、元々HPが少ない
このスペックから導きだされる解
それは一撃でも攻撃を受ければブレイクオーバーだということだ
56  ◆06eq/BhDjA 2013/04/05(金) 17:49:31
「隼人!危ない!」

速水が叫ぶ
気がつくと俺はアマゾネスとムシャの挟み撃ちを受けそうになっていた
だがこのフライトデクーには飛行機能が備わっている
俺はフライトユニットを起動し、上空へ逃げる
そして勢い余ってアマゾネスとムシャは激突、大破した
これで残りは3機
こちらの頭数と同じだ

「水窪後輩はそのまま制空権を維持しておいてくれ」

先輩が指示を出す
俺はそれに従い、武器をマキシガトリングに持ち変えた

「バーサーカーの相手は私が行おう。速水後輩はウォーリアーとジャンヌDを、水窪後輩は我々の援護を頼む」

「「了解しました」」

3人は武器を構え直す
さぁ、第2ラウンドの開幕だ
57  ◆06eq/BhDjA 2013/04/05(金) 17:49:48
静寂が空間を支配する
唯一響く音はフライトデクーのブースター音のみ
双方お互いの出方を伺っているのだ
一瞬でブルドを塵にした先輩、目前まで迫っていた二機を軽々とかわし、おまけに大破させた俺
そうなると自然と狙われる人間は決まってしまう
おそらく暴走LBXはAIによって制御されている
AIは人間が考えているよりもずっと単純だ
全てを学習しようとする、それがAIだ
ならばまだデータの取れていない速水を狙うのは必然と言ってもいいだろう
全員のデータを採取した後、勝利に最も有効な策を練り、そして勝つ
シナリオ通りにいけばそうなるだろう
そう、あくまでもシナリオ通りにいけばの話だ
58  ◆06eq/BhDjA 2013/04/05(金) 17:50:03
ガッという地を蹴る音が鳴り、砂埃が舞う
やはりと言うか、案の定奴等は速水めがけて一斉攻撃をしかけてきた
ハンマーを所持しているため、速くは動けないとでも考えたのだろう
それが失敗だった

「弱点を克服できないのならば、補えばいい」

突如地面が閃光を放ち、轟音を轟かせ爆発した
砂埃が天高く舞い上がり、黒煙はジオラマ中に広がる
暫くして煙が払われた頃、そこにはスタン状態の3機が、腕や脚を吹き飛ばされた姿で横たわっていた
実は速水、バトルが始まった瞬間に周囲にスタンマインを仕込んでおいたのだ
誰にも悟られることなく、罠を張り巡らせたのだ
ちなみに速水の使用武器はハンマーではない
グレネードだ
グレネードは所持できる数に制限があるため、無限に繰り出すことはできない
だが速水は限られた数の中で敵を仕留めてみせる
その職人のような速水の技に、LBXプレイヤーは畏敬の念をこめてこう呼ぶ
『寡黙な花火師』と
59  ◆06eq/BhDjA 2013/04/05(金) 17:50:19
「さて、とどめを刺すか」

ジョーカーが鎌を振り上げる
その瞬間、スタン状態から回復したバーサーカーが、ジョーカーにタックルを繰り出した
だがそんな足掻きも虚しく、軽くあしらわれ、首を落とされた
残りの2機はまだ横たわっている
先輩が首を小さく縦に振る
『殺れ』というサインだ
俺はジャンヌDの胴を撃ち抜き、速水はハンマーを高く掲げ、勢いよく振り下ろした
爆発の炎が真夏の太陽のように見えた
60  ◆06eq/BhDjA 2013/04/05(金) 17:50:36
『戦闘終了』

CCMに『YOU WIN』の文字が表示され、Dエッグが消滅する
俺はフライトデクーを内ポケットにしまう

「しかし、こいつらは一体何だったんだ?」

先輩が不発したバーサーカーの胴体をいぶかしげに見つめる

「いや、今はそんなことはどうでもいいな」

先輩が速水に尋ねる

「現在の校内の状況はどうだ?」

「さっき戦ってるときに外で大きな爆発音がしましたから、あるいは・・・」

言葉を濁らせてうつむく

「そうか・・・」

そう言って先輩は俺たちのほうを向き、こう言った

「今から、私達の学校を取り戻す・・・・!」
61  ◆06eq/BhDjA 2013/04/05(金) 17:50:53
ダンボール戦機episodeβ
第1話『狂喜乱舞のアブノーマル』