25  名前:黒鋼の歯車【ムニルの宿の幻想案内人】【ペイント団】【GX】【羅・弐・八咫烏】 ID:JKJKNEDF  2013/05/10 20:49
時を同じくして、此処『王都ホルス』のある場所でも宝玉の話がされていた

「するってーと、お前は偶然拾った古びた本に書いてあることは鵜呑みにする、と」

石造りのベンチに寝転がった男が必死に何かを説明する若い男に問う

「だってこれが本当の話だったとしたら大発見っすよ!
一生遊んで暮らせる金が手に入るかもしれないっす!」

そう熱弁する男の名は『ダンプティ=エアロクサー』
さっきから気だるそうに彼の話を聞き流している男の部下だ

「しかもこの地図見てくださいよ!このすぐ近くの火山をさしてるっす!」

ダンプティが古びた地図を大理石の机の上に乱雑に広げる
地図から埃が飛散し、男が咳き込む

「げほっげほっ・・・・・・。何々?・・・・・・」

寝転んでいた男、『ジョルジュ・ジョジョリオン』が興味を持ったのか、その地図に目をやる

「ほう・・・、中々面白そうじゃあないか」

ジョルジュが重い腰を上げ肩を解す

「最近刺激が足りなくて飽き飽きしていたところだ。それが釣りでも暫く付き合ってやるよ」

そう言って自分の荷物の入った袋を抱え、ジョルジュは外へ出た
それを追うようにダンプティも後に続く

「待ってくださいよぉ~!『ジョジョ』の兄貴~!」

今日の最高気温は37度、天空に聳える灼熱の太陽が彼らを照らす
しかし彼らは暑さなど気にもしないで前へ進む
彼らの目的地は液体窒素の溶岩が流れ、雹の火山灰が降り注ぐ極寒の地
―――――タイダル火山


144  名前:黒鋼の歯車・零【ムニルの宿の幻想案内人】【GX】 ID:JKJKNEDF  2013/05/11 20:58
王都ホルスより北に位置する絶対零度の世界、タイダル火山
その温度故、生息する生物は少ないが
とんでもない生命力を持つ化け物が巣くう等、様々な噂が流れている
そしてこの二人、ジョルジュとダンプティもこの地へ足を踏み入れたのだった

「いくら温度を感じないとはいえ、雰囲気で寒くなるな…」

全身黒の衣装で身を包んだ男ジョルジュは、壁に張り付いた氷を眺めて言う
氷点下の世界で彼がなんともないのは、彼に温感がないからだ
生まれついての障害らしく、過去に何回も火傷したことがあるらしい

「兄貴はいいっすよね~、こんな寒くてもなんともなくて」

凄まじい厚着の男、ダンプティが言う
彼は温感障害なんてないので普通に暑さ寒さを感じる

彼らは無言のまま、歩いて火山の奥に進む
何故無言なのか、それは吐息が凍って口に張り付くのを避けるためだ
余計な体力を消耗しない、それが火山攻略の条件だ


暫く進んだところで休憩をとる
ずっと歩いていれば息が切れ、吐く息の量が増えるからだ

何分か経って再び歩き始める
火山内洞窟を抜け、外から上へ登る
ここまで噂のような化け物は現れてはいない
しかし油断は禁物だ
もしかしたらこれから現れるかもしれない
もしくは別の脅威が襲いかかるかもしれない
そんなことを考えながらジョルジュはある場所を目指しひたすら歩き続ける


「ついたぞ」
「え?ここっすか?」

二人の行き着いた先はタイダル火山の火口
マグマでなく液体窒素が下に見える

「地図ではこの下にあるようだぞ」
「この下って…どうやって行くんすか?」
「飛び込むしかないだろうな」

ジョルジュは荷物をダンプティに渡し、軽いストレッチを始めた

「ちょっ!何やってんすか!まさか飛び込むつもりっすか!?」
「そうだが、何か問題でもあるか?」
「いくら兄貴でも今回は無茶っす!流石に死んじまうっす!」

そんなダンプティの制止も聞かず、ジョルジュは火口にダイブした



ところで一つ気になることがある
いくら温感がないとはいえ、体温は低下する
なのにジョルジュは体温が下がるどころか、平然としている
防寒装備もなしにこの火山に乗り込んでいるのにだ
それは何故か
彼は異常に体温が高いのだ
これは病気などではなく、彼の能力
そう!彼は『炎の能力者』なのだッ!

「これくらいの量なら5秒で片付くか」

落下しながらジョルジュは大きく息を吸い込む

「【デス・インフェルノ】!」

彼は口から大量の炎を勢いよく吹き出した
それは火口内に張り付いていた氷を溶かしながら、液体窒素まで伸びる

「おおおおおおおおおおおおおお!!!!!」

炎の勢いと量が増し、液体窒素に触れる
すると火口内に溜まっていた液体窒素は一瞬で蒸発した
それほど高温だったということだろう
あとは炎ので落下スピードを調節し、上手く着地するだけだ

ほっと一息ついたとき、それは現れた
落下するジョルジュに向かい突進し、空まで上昇する
ジョルジュも負けじと足から炎を噴出し、それを追いかける
それは火口に着地し、積もっている雪を撒き散らす
ジョルジュも追って着地し、足元の雪を溶かす
待機していたダンプティとも合流し、それを睨む
それは王都で噂になっている化け物ととても似かよっていた
青色で、蛇のようであるが翼があり、屈強な脚を持ち、頭部から角が生えた怪物
となると、これが噂の化け物と考えていいだろう

『この地へ何の用だ、ニンゲンよ』

化け物が喋った
いや、喋ったというのには語弊があるかもしれない
奴は直接頭の中に語りかけてきた

『我が名は『バルドニクス』。この地を守護する者、そして宝玉の化身である』


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